活動

博物館は調査・研究を行い、資料を収集・整理・保管し、それを基に教育普及を行う社会教育機関とされています。しかし、秋吉台科学博物館の場合は一般の博物館が行う活動に加えて、設立の目的である研究者の調査研究活動の拠点として学会への貢献、秋吉台・秋芳洞の保全という活動が付け加えられます。そして当館の行う調査・研究の対象は秋吉台・秋芳洞を主体としたものです。

 

 

 

研究と学会への貢献

秋吉台科学博物館設立の目的の一つは、秋吉台・秋芳洞への学術研究をさらに進め、学会への貢献をすることです。これまでに当館の職員、または外部の研究者と共同で行った研究により多くの成果が得られています。

地質分野では、秋吉台がサンゴ礁でできたこと、そのサンゴ礁をつくった古生物の分類学的・古生態物学的研究、また帰り水地域における詳しい地質構造の研究とボーリングによる逆転構造の再検討が特筆されます。

地理・洞窟分野では、秋吉台における詳細な洞窟分布や各洞窟の発達史、カルスト地形の水収支の研究で大きな成果があります。

生物分野では、コウモリの個体標識による個体群動態や洞窟性生物の生態、また好石灰岩植物や台上の植生などで注目される研究成果があがっています。

これらの研究成果は、毎年一回発行される「秋吉台科学博物館報告(Bulletin of the Akiyoshi-dai Museum of Natural History)」によって広く公表されてきました。また、それにとどまらず国内外の学術雑誌に論文を投稿し、研究成果を広く還元しています。さらに、各学芸員は毎年数回学会発表を行っており、その発表の場は国内にとどまることなく世界へ広く秋吉台についての研究成果を発信しています。

当館を拠点として、秋吉台・秋芳洞の研究を行い、優れた業績をあげた研究者も少なくありません。特に地質学、古生物学、地理学、洞窟学、動物学、植物学の分野で秋吉台を長期にわたり継続研究している研究者も数多くおられます。

 

 

 

教育活動

展示

博物館の展示に対する考え方は、職員の研究活動によって秋吉台・秋芳洞を研究した結果を分かりやすく解説・説明したものとしています。

地質・古生物に関しては、まずジオラマによって地球の誕生から人類の出現に至るまでを解説し、そして秋吉台の地質と化石について実物標本およびパネルで解説しています。秋吉台から豊富に産出するフズリナや、サンゴ、コケムシ、腕足類、アンモナイト、巻貝、三葉虫、コノドント、石灰藻、ストロマトライトなどの化石は、実物標本を展示し、それぞれについて解説しています。そして、それらの化石が現在南太平洋にみられるような美しいサンゴ礁を造っていたことをパネルによって解説しています。

地質の展示では、小澤儀明博士とそれ以降行われた秋吉台の地質構造に関する各研究者の解説をしています。そして、職員が長年研究し、ボーリング調査を行った帰り水地域の地質を、模型を使って解説しています。さらに、秋吉台が逆転構造をしていることを最初に発見した小澤儀明博士を紹介したコーナーがあります。

第四紀哺乳類化石は、秋吉台の洞窟や採石場からたくさん発見されています。それらはヤベオオツノシカ、ニッポンサイ、ヨウシトラの復元模型とムカシマンモス、ナウマンゾウ、シマトガリネズミ、アキヨシホオヒゲコウモリなどの実物標本などを展示し、パネルによって解説しています。

カルスト地形と鍾乳洞に関しては、秋吉台パノラマと秋芳洞の模型を中心に、多くの写真とパネルによって解説し、鍾乳洞を含めたカルスト地形の諸要素を詳しく説明しています。

生物の展示では、秋吉台で最も特色のある洞窟性生物の生態をジオラマで展示し、特に洞口に生息する好石灰岩植物、洞内の植物、コウモリ、洞口および洞内の陸貝を詳しく紹介しています。また、台上の草原における生態展示では、哺乳類の棲み分けを中心に展示しています。さらに、湧水に棲む魚類、カルスト台地の両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の分類展示やカルスト台地の植生展示も行っています。

 

自然観察会・講演会など

秋吉台の自然を正しく理解していただくため、秋吉台エコ・ミュージアムや秋吉台の自然に親しむ会などと共同で年10回程度の自然観察会を行っています。全国の小中高等学校大学、博物館および研究機関からの依頼により、秋吉台についての講演会や巡検、体験学習を指導しています。

 

解説書と映像

秋吉台の自然の成り立ちと秋吉台の学術性重要性を広く知っていただくため、多くの解説書と映画を作成しています。

解説書は「秋吉台3億年」「カルスト台地と鍾乳洞」「秋芳洞の自然観察」「秋吉台の自然観察」「秋芳洞の研究史2001」「秋吉台の気象」「秋吉台の地学に関する文献目録」などそれぞれの分野で一般向けのものを作成しています。

映画は秋吉台の成り立ちや洞窟性動物の生態を詳しく説明したものを作成し、数多くの人々にご覧になっていただいてます。

 

資料の収集と保管

博物館で収集する資料には、実物標本のほか洞窟データや気象データなど各種の記録類、文献類があります。当館の収集している実物標本は、秋吉台とその周辺の化石、岩石、鉱物、動物、植物、考古資料などで、これらには一般に展示する教育用の標本と研究用の標本があります。

多くの教育用標本は展示室の標本との展示替えができるように標本室に保管してあります。

研究用の標本の中には、国際動物命名規約に従って記載された多くの新属・新種を含む標本があり、これらはタイプルームに保管してあります。こうすることで、いつでも研究者の要望にこたえられるようになっています。

地質・古生物・動物・植物・洞窟に関するデータも数多く整理・保管しています。

気象観測資料、地下水の分析資料も整理しており、これらの資料は研究者や自然愛好者はもとより地元の産業の発展にも役立てられています。

当館には多くの博物館・大学・研究所の研究報告書が送られてきています。それらは図書室に整理され、いつでも外部の研究者や自然愛好家をはじめ、多くの方々にも閲覧できるようになっています。

 

秋吉台・秋芳洞の保存

学術的価値の高い秋吉台および秋芳洞をはじめとする文化財は、観光や学習に活用されながらも保全されていかなければなりません。この保全と活用、一見矛盾するように見えるこの諸問題も、自然保護思想の確立によって解決されてきました。

この自然保護思想の確立は秋吉台の地質・古生物・動物・植物・気象・地理・洞窟・地下水・考古・産業など幅広い範囲をおよぶ基礎資料の蓄積と、総合的な視点に立って、初めて可能となりました。これにより、目先にとらわれることなくしっかりとした視点で自然を見据えることができるようになりました。これらの基礎資料も、積極的に公開し、誰でも自由に利用できるようにしています。

特別天然物である秋吉台・秋芳洞の素晴らしさや大切さを、より多くの方々に知っていただきたいと思っています。